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昨日は注目していた製品の発売日。以前にも紹介したAH-K3001Vの発売日だったのです。
いずれは記事にも書くつもりだったので、ボクも買う予定だったんですが、手元にはまだ原稿にしてない端末がたくさんあるし、最初はアツいユーザー(笑)が買いに走るんで、ちょっと落ち着いてから買おうと考えてたんす。でもまあ、市場の反応が気になるので、昼間も友だちから情報をもらったり、夕方以降にヨドバシカメラに立ち寄ったりしたのですが、結果はやっぱり品切れ。
これが売れまくって品切れならいいのですが、話はどうもそうじゃない。『入荷した品物が少なくて売り切れ』『うまく配分できなくて一部で売り切れ』というのが真相のようなのです。一部であっさり買えたなんて話もあるのですが、登録に数時間を要したとか、いろいろとマイナスな話が聞こえてくる。せっかくのチャンスなのに、何をやってるんだが……。
今回のAH-K3001V、初期の出荷台数が少なかったんですが、裏話をバラしちゃうと、製品そのものは比較的、早く完成していて、発売のタイミングをうかがっていたというのが本当のところ。つまり、事前に製品を潤沢に仕込もうと思えば、仕込めたはず。にも関わらず、初日にあっさりと品切れ。ボクの周りでも興味を持っていたのに、買えなかった人がかなり居る。いろいろと聞き回ったところに寄れば、今月末にならないと潤沢に追加分が出てこないらしく、安定供給ができるまでにはもう少し時間が掛かりそうな様子。 なぜ、こんなことになったのかというと、それはおそらく、
「DDIポケットが京セラから端末を仕入れなかったから」 というのが真相。 DDIポケットの端末は他の通信事業者が供給する端末と違い、メーカー自身がDDIポケットのPHSの規格に準拠したものを開発し、販売する「メーカーブランド」って方法を採っている。ところが、今回のAH-K3001Vはどうもキャリアブランドに近い形で販売が行なわれているようで、実質的な仕切りはDDIポケットがやってる模様。たぶん、どれだけ売れるのかがしっかり読めなくて、きちんと発注を掛けてなかったんでしょう。発表会のときの反応を見て、慌てて発注を掛けたのかもしれないけど、メーカーにも常に部品が揃ってるワケじゃないだろうし、「ハイよ」って、すぐに製品ができるわけでもない。周りの情報を聞く限り、DDIポケットの仕切りミスの感が強い。
考えてみれば、DDIポケットは過去にも似たようなことをやってるんですよ。「feelH"」展開の第一弾となった三洋電機製「RZ-J90」を発売したとき、市場ではかなり注目を集めたのに、商品が足りなくて、発売から1カ月くらいはなかなか買えないという状況が続いた。もっともこのときはホントに開発が遅れて、なかなか製品が出荷できなかったんだけど(しかもそのために一度、発売日を延期したはず)。結局、feelH"はそこそこ話題になったものの、ケータイを脅かすほどのムーブメントにはならず、音声重視の端末は事実上、これが最後のヒット。その後はデータ通信ユーザーの開拓に追われるわけです。
ケータイ Watchのニュースなどを見てもわかる通り、PHSが厳しい状況に置かれているのは誰もが認めるところ。いくらアツいユーザーがいるとは言え、せっかくの新端末が買えないんじゃ、いずれはジリ貧になるだけ。しかも5月半ばという発売日は意外にタイミングが良くて、ケータイの新製品があまりなく、店頭でも十分に話題を集める可能性があったんだけど、それを逃してしまいそうな状況。あと2〜3週間もすれば、ケータイの夏モデルが店頭にズラリと並び、お客さんの目もそっちに奪われてしまうかも……。
特に、今回のAH-K3001Vは今までよりも広い層に受け入れられる可能性があるだけに、買えない状況が続くのはあまりよろしくない。AH-K3001Vは記事などを読んでもらえればわかるように、Operaブラウザを搭載しているので、パソコン向けホームページが見られる。こう書くと、モバイルユーザーの置き換え端末みたいな捉え方をされるんだけど、個人的にはオークションや掲示板のヘビーユーザーなど、コミュニケーション重視のユーザーに支持されるんじゃないかと予想してる。そういう意味では今まで「PHSなんて……」と敬遠していた人も注目するかもしれないし、仕上りもなかなか良く、いい意味でPHSらしくないので、結構、売れる素地があると思ってたんす。それが初日からいきなりコケるとは……。もったいないったら、ありゃしない。
実は、同じ業界で、これに似たような形で契約者を失ってる例がある。それはここ数年のVodafone。魅力的な新端末は出すんだけど、店頭に並ぶのが電番の入った新規契約向け端末ばかりで、機種変更用端末の端末が全然ないという状況が続いている。そのため、店頭には新端末が並んでるのに、既存のユーザーはなかなか買い換えられないわけです。Vodafoneは「代理店がやってることなので……」と言いつつ、代理店は「Vodafoneから入ってくる製品が……」と、お互いに罪のなすりつけ合い。
どっちが犯人なのかはどうでもいいんだけど、結局、ユーザーはしびれを切らして、禁じ手で機種変更しちゃったり、なかには他のキャリアに乗り換えてしまう人もいる。現に、知り合いの編集者はついにVodafoneやめちゃったし、たくさんあったユーザーサイトも次々と閉鎖されてる。ユーザーも嫌気がさして、離れちゃったわけですな。
その結末は、最近のTCA(財団法人電気通信事業者協会)の集計を見てもわかる通り。そこそこの新規契約があるはずなのに、解約が同じくらいの勢いであるらしく、新規契約の伸び率は他社よりも格段に低いし、地域によっては純減してる。世間じゃ「auが好調!!」なんて騒がれてるけど、その一端はVodafoneの販売施策の失敗が原因。ボクの周りでもVodafoneからauに乗り換えた人がいます。
とまあ、いろんな裏付けとか話せば、長くなっちゃうんですが、ここ1カ月くらいでAH-K3001Vがきちんと供給できるか、メリットをアピールできるかで、今後のDDIポケット、ひいてはPHS全体の行く末が決まりそうな気がする。どんなにいい商品を開発してもユーザーも買えないものは買わないわけで、このチャンスを逃したら、もう先はありませんぜ。 > DDIポケット
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2004/05/15
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